2013/11/17 過去の克服 Ⅱサムエル12:15-20

人生で、””取り返しのつかないことをした””という言い方をする。社会でも歴史でも同じ言い方をする。本当に取り返しがつかないのか。私たちのだれもが過去を背負っている。過去の克服なしに、新しく一歩を踏み出すことはできない。国家としての日本がアジア諸国に対して犯した犯罪。戦後60年以上経っているのに、被害を受けた国々とギクシャクしているのは、過去の克服・清算がいかにむずかしいかを物語っている。私自身、決定的に”取り返しのつかないことをしてしまった”男だ。
ダビデは羊飼いから王になったが、部下ウリヤからその妻を奪い、夫ウリヤは故意に戦死に見せかけ、ほかの部下をも何人も殺してしまった。取り返しのつかないことをしてしまったダビデは、もはや以前の彼ではなかった。告白によって死は免れたが、最初の子どもは死んだ。『あなたに生まれる子どもは必ず死ぬ』、これはどこかで聞いた言葉ではなかったか。エデンの園で禁断の木の実を食べると『必ず死ぬ』と言われたではないか。
罪を犯したダビデが死ななくてはならないのに、子どもが身代わりに死んだ。これは人生には”身代わりが必要だ”と言うことがわかる。現代でも両親の不行跡で子どもが犠牲になっている例が跡を絶たない。
14節に『主の敵に大いに侮りの心を起こさせ』。神を日ごろ快く思っている人に、神を信じている人が良くないことが起これば、神をあざける機会を与えてしまう。信仰者の責任の大きさを語っている。敵とまで言わないまでも、信仰のない家族は、あなたのことをよく見ている。よく観察している。何があれば「お前の信じている神は・・・」と言う反応になる。パウロは、そのような口実を与えないように、生きなさいと勧めている。

子どもが病気になったとき、ダビデは食を断って一晩中に地に伏していた。家来たちは子どもの死を告げたら、自殺をしたり何か悪いことが起こるかもと、恐れた。ダビデには、家来には分からない、詩篇51,32にあるような苦しみを味わっていたにちがいない。自分は、赦されたものの、今自分の犯した罪の罰を受けているのだ、という思いに押しつぶされていた。『蒔いた種は刈り取らなければならない』『罪の支払う報酬は死』。

ところが死んだと分かったとき、まず『主の宮に入り、礼拝をしてから』家に帰った。取り返しつかないことをしてしまった人の、取るべきはまず『礼拝』から始まる。生きているときに断食して、死ぬと起き上がり食事をする。家来の不審に
ダビデは説明している。死ぬ前なら生きるかも知れない。死んでしまったらもはや呼び戻すことは出来ないからと。ここに聖書の生死観がある。世の人々は相手が死んでからでもくよくよする。しかし聖書は確かに大きな犠牲で、悲しまなくてはならないが、再起の希望を持たせる。

その再起の希望は、ソロモンの誕生だ。王の名は「シャローム(平和)」、個人名は「エディテヤ(主に愛される者)」。最近は、この名前は「身代わり」と言う解釈がある。殺されたウリヤ、罰として死んだ子どもの『身代わり』。

取り返しのつかないことをしてしまった『過去の清算、克服』は、〈身代わり〉なしにはあり得ない。それなしには、新しい出発はできない。
マタイの冒頭にあるイエス・キリストの系譜に、『ダビデはウリヤの妻によってソロモンをもうけ』とある。イエス・キリストは『ダビデとウリヤの妻』に関する忌まわしい過去を担って下さった、殺害されたウリヤ、先に死んで行った子どもを含めて、主イエスはつぐない、贖い、神との平和の中へと回復された。ダビデの消しがたい汚点、その汚点によって犠牲になった人々、打ちひしがれている人々に向かって、聖書は神さまが用意してくださったソロモンを与えられたではないかという。そのことを思い起こして、新しく出直せと言う。
私たちなら、『ソロモンにまさるーマタイ12:42』主イエスを見上げよ、です。過去の回復は、私たちの過去の罪責・失敗の一切を、十字架の上で引き受け、身代わりに背負ってくださったキリストを見上げるほかはない。この一年も終わりに近づいている。人に身代わりを背負わせるのではなく、お互いがその罪を負い、覆い合う役割が与えられている。
この一年、どの位の失敗や罪を犯して来たか。もういちど、過去の一切を償い、贖い、神との平和の中に回復してくださる主イエス・キリストを見上げ、悔い改めて、クリスマスの主を喜んでお迎えする準備をして行きたい。
ヘブル 8 章
8:11 また彼らが、おのおのその町の者に、また、おのおのその兄弟に教えて、『主を知れ』と言うことは決してない。小さい者から大きい者に至るまで、彼らはみな、わたしを知るようになるからである。
8:12 なぜなら、わたしは彼らの不義にあわれみをかけ、もはや、彼らの罪を思い出さないからである。」
(美浜BBC礼拝 2013,11.17)